Sleep Apnea Syndrome
睡眠時無呼吸症候群とは、⽂字通り睡眠時に呼吸が⽌まり、無呼吸状態が繰り返される病気です。英語で【Sleep Apnea Syndrome】と⾔い、【SAS(サス)】と略されることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の患者数は、重症の⽅だけでも国内に300万〜400万⼈いると言われており、そのうち適切な治療を受けているのはわずか40万〜50万⼈程しかおらず、多くの⽅が⾒過ごしている状態となっています。
AHI=無呼吸低呼吸指数とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度は【AHI:Apnea Hypopnea Index】=無呼吸低呼吸指数を基に診断していきます。AHIは、⼀晩の睡眠を通して、1時間あたりの無呼吸や低呼吸(呼吸が浅くなる状態)の頻度などを表す指数です。このAHIが5回以上認められ、⽇中の眠気などの⾃覚症状がある場合、SASと診断されます。AHIが5回以上~15回未満が軽症、15回以上~30回未満が中等症、30回以上が重症とされています。
AHI=無呼吸低呼吸指数1時間あたりに認められる無呼吸、低呼吸の回数
AHI:5回未満 | 正常範囲内 |
---|---|
AHI:5回以上〜15回未満 | 軽症睡眠時無呼吸症候群 |
AHI:15回以上〜30回未満 | 中等症睡眠時無呼吸症候群 |
AHI:30回以上 | 重症睡眠時無呼吸症候群 |
なぜ気道が狭くなるの?
健康な⼈でも、仰向けで寝ると重⼒の影響で⾆や軟⼝蓋が下がり、気道が狭くなります。また、眠っている状態では筋の筋⾁も緩んでしまいます。その他、下記のような理由で気道が狭くなったり塞がったりしてしまいます。
閉塞型SASでは、無呼吸の間はいびきが⽌まり、その後あえぐような激しい呼吸や⼤きないびきで呼吸が再開するのが特徴です。
あえぐような呼吸をすることによって、寝相が悪かったり寝汗をかいたりもします。また、夜中に何度もトイレに起きるといったこともあります。
呼吸が⽌まっている間は、酸⽋を起こしているような状態になります。そのため朝起きると頭が重いといったことも起こります。
休むために睡眠をとるはずなのに、無酸素運動をしているのと同じような状況になってしまっていますから、全⾝の倦怠感や不眠に繋がることもあります。
閉塞型SASでは、無呼吸から呼吸を再開させる度に脳が覚醒状態になるため、睡眠が分断してしまいます。この脳の覚醒によって、本⼈には起きたという⾃覚はありません。
しかし、脳の覚醒により深い睡眠が得られなかったり、夢を見る眠りと⾔われるレム睡眠が細切れになったりします。7時間ベッドに⼊っていたとしても、SASによって睡眠が分断されていると、睡眠時間が不⾜しているのと同じ状態になります。
SASによって引き起こされる⽇中の眠気が原因で、交通事故や災害事故の危険性が⾼くなります。
2003年2⽉26⽇に、⼭陽新幹線の運転⼿が居眠り運転を起こす事例がありました。
その後の検査によりこの運転⼿がSASであることが判明し、SASに対する注⽬度が高まるようになりました。
また、⽣活の質(QOL)を調査した結果をみると、軽症から中等症のSAS患者様の「活⼒」が低下しており、重症ではさらに広い項⽬のQOLが低下すること、また本⼈だけでなくベッドパートナーのQOLも低下することが報告されています。
※Baldwin CM,et al. Sleep2001:24:96-105
※Parish JM,et al. Chest2003:124:942-947
急性期のリスク
慢性期のリスク
※1 30〜40%はSASを合併していると⾔われています。
SAS患者様における⾼⾎圧は健常⼈の1.37倍(※1)、夜間突然死は健常⼈の2.61倍(※2)、脳梗塞は健常⼈の3.3倍⾼い(※3)と⾔われています。
SASでは、酸⽋状態になり、少ない酸素を全身に運ぼうとして⼼臓や⾎管に負担がかかります。この状態が長期間続くと、様々な⽣活習慣病の合併症を引き起こす恐れがあります。
また、夜間の酸⽋状態が免疫⼒の低下を招き、その結果、重症SAS患者様では健常⼈の4倍癌になりやすくなると⾔われています(※4)。
※1 Neito FJ.JAMA2000;283;1829-1836
※2 Gami AS.N Engl J Med 2005;352;1206-1214
※3 Yaggi HK et al,N Engl J Med 2005;353;2034
※4 Am J Respir Crit Care Med.2012 Jul15;186(2):190-4
⼀般の市⺠を対象とした調査では、AHI5以上+⽇中の眠気があるという⽅の割合は、約200万⼈とも⾔われています。(男性3.3%、⼥性0.5%、全体で1.7%)
また、男性は肥満の傾向にある40〜60歳代に多く、⼥性は閉経後に増加していきます。
▶ 参考 睡眠呼吸障害Update.2002.P.2-8
肥満度=BMI(Body Mass Index)の求め⽅
体重(kg) ÷
{⾝⻑(m)×⾝⻑(m)}
BMI値25以上が肥満と⾔われています。
肥満があるとSASを発症しやすく、重症化させます。
しかし、肥満がなくても他の条件が重なることによってSASが発症します。
⽇本の10施設において治療が必要とされる方を対象にBMIに関するアンケート調査を⾏ったところ、そのうちの30%はBMIが25未満で肥満を伴っていなかったとの報告があります。
⽇本⼈は肥満の程度が軽くても形態的問題からSASを発症しやすい⼈種と⾔われています。
▶ 参考 睡眠呼吸障害Update.⽇本評論社.2002.P101-107
About inspection
眠気のアンケート
「眠気の状況」を参考に、以下の8つの質問に対して当てはまるものの数字の合計を出してみて下さい。
あなたの眠気の状態がチェック出来ます。
①座って何かを読んでいる時(新聞、雑誌、本など)
②座ってテレビを⾒ている時
③会議、映画館、劇場などで静かに座っている時
④乗客として1時間続けて⾃動⾞に乗っている時
⑤午後、横になって休憩をとっている時
⑥座って⼈と話をしている時
⑦昼⾷を摂った後(飲酒なし)、静かに座っている時
⑧座って⼿紙や書類などを書いている時
眠気の状況
あなたは何点ありましたか?
12点以上が、日中に強い眠気がある状態と⾔われています。
点数が⾼ければ⾼い程、眠気の⾃覚が強く、何かしらの睡眠障害の疑いが⾼くなります。
しかし、重症SASの患者様で日中に眠気の症状を伴う⽅は40%しかいないというデータもあり、眠気の症状がないからと言って、SASが存在しないとは限りません。
⼀⽅で、眠気の症状がある⽅の多くは、SASや何らかの睡眠障害がある可能性は⾮常に⾼くなりますので、早めの受診をお勧め致します。
呼吸や⾎中の酸素の状態などを測定し、睡眠呼吸障害の程度(AHI)を求めることが出来ます。AHIが40以上で眠気などSASの症状が明らかな場合、CPAP療法の対象となります。AHIが40未満であれば、さらに精密検査(PSG検査)が必要です。CPAP療法後の治療効果判定の検査として⾏うことも出来ます。
睡眠簡易検査キット宅配サービスについて
当クリニックでの問診、眠気のアンケート調査結果にて睡眠簡易検査が必要と判断された患者様には、ノーザリーメディカル株式会社と連携し、患者様のご⾃宅へ睡眠簡易検査キットを郵送させて頂きます。
検査終了後、着払いで検査キットを返送して頂き、後⽇クリニックにて検査結果のご説明をさせて頂くシステムとなります。
※検査料⾦は保険適用となり、3割負担の⽅で4,240円となります。
体に様々なセンサーを取り付け、睡眠の質(眠りの深さや分断の状態)を評価をします。また、睡眠中に起こる異常⾏動や不整脈などの評価も⾏い、他の睡眠障害、合併症の有無について診断します。当クリニックにて睡眠簡易検査を⾏い、睡眠時無呼吸症候群が疑われ、PSG検査が必要と判断された場合は、ご自宅で行える在宅PSG検査を当クリニックより⼿配、実施いたします。
Treatment
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
当クリニックでは、患者様に合わせた5つの治療⽅法をご提案しています。
CPAP療法では、CPAP装置からホース・マスクを介して処⽅された空気圧を気道へ送り、常に圧⼒をかけて空気の通り道が塞がれないようにします。SASに対し、現在最も治療奏功率の⾼い治療法(CPAPを使⽤した患者様の95%でAHIを5以下に改善)と⾔えます。
「よく寝た」という熟睡感が得られ、スッキリと⽬覚めることが出来ます。
CPAP療法を適切に⾏うことにより、睡眠中の無呼吸やいびきが減少します。また、治療を継続することによって、眠気がなくなったり、夜間のトイレの回数が減ったりという、いわゆるSAS症状の改善が期待され、さらには⾼⾎圧、⾼脂⾎症、糖尿病など⽣活習慣病改善効果の報告もあります。
CPAP療法はめがねをかけていることと同じで、治療器を使⽤しない限り無呼吸はなくなりません。また、治療器の装着に慣れるのに2~3か月かかる場合もあります。
検査結果で⼀定の基準を満たせば、CPAP治療は健康保険の適⽤になります(簡易睡眠検査でAHI40以上、PSGでAHI20以上がCPAPの保険適用)。その場合には、定期的な外来受診が必須となります(治療が安定すれば、当クリニックでは2か⽉に1回の通院となります)。診察時に主治医と相談し、より良くCPAP療法を継続して頂くことが重要ですので、必ず外来にかかるようにして下さい。
⼝腔内治療とは、下顎を前⽅に固定して空気の通り道を開くようにするものです。マウスピース(⼝腔内装置)の作成は、健康保険の適⽤となります。
医師の判断にてマウスピースによる治療が適当と判断された場合、提携する⻭科医院へ紹介させて頂き、マウスピースを作製して頂くことになります。
マウスピースの効果を判定するために、マウスピース作製後、装置を付けながらの再簡易検査を⾏うことをお勧めしております。
マウスピースは体への負担が少なく、CPAPと⽐較し⼿軽に⾏える治療ですが、CPAP程の奏功率が得られなかったり、下顎前突位を保持するため受け⼝が悪化したりといった⽋点もあります。マウスピースが奏功しやすい⽅の特徴として、SASが重症でない、肥満がない、顎が⼩さい、側臥位睡眠で無呼吸が少ないことなどが挙げられます。
気道閉塞の原因がアデノイド肥⼤や扁桃肥⼤などであった場合には、⼿術で取り除くことがあります。
また、⿐閉を起こす⿐疾患はCPAPや⼝腔内装置の治療を妨げるので、⼿術が必要となることもあります。
⼿術療法はSASの根本的な治療が期待出来る⽅法です。
⼿術効果の⾼い⽅の特徴としては、SASが重症でない、肥満がない、扁桃腺が⼤きい、45歳以下などが挙げられます。
SASの⼿術治療では、⼊院の上、全⾝⿇酔が必要となります。
当クリニックで⼿術療法が適当と判断された⽅は、提携している関連病院へ紹介させて頂きます。
※⽇帰りで⾏う軟⼝蓋焼灼術は、単純性いびき症(AHI5以下で、いびきがある状態)に対して良い適応であり、⼀般的に単独で⾏うことによるSASの治療効果はないと言われています(当クリニックでは施⾏していません)。
少しでも重⼒の影響を受けないように、体を横向きにして寝ると症状が軽減する場合があります。
側臥位睡眠がSASの改善に有効かどうかは、体位モニターのついた簡易睡眠検査を⾏うことで判定が可能です。横向き寝によりAHIの有意な改善が得られる⽅に枕の効果が期待出来ます。
治療法のメリットとしては使⽤が簡便であり、導⼊の際の患者様の抵抗が少ないことが挙げられますが、睡眠中に寝返りをうって仰向けになってしまうと効果がなくなるため、他の治療法と⽐較してやや不安定な治療となります。
⽣活習慣の改善だけでSASを治すことは困難ですが、他の治療と併せることによって軽減させることは可能です。
また少しでも良い睡眠をとるために、眠りにつきやすい環境を整えることも必要です。
減量により皮下脂肪が減ると、気道が拡張し、SASの改善が期待出来ます。体重の変動とAHIの変化について観察した研究によると、平均して10%の体重減少でAHIが30%減少し、20%の体重減少でAHIが50%減少したという報告もあります(※)。
減量は根本的な治療になり得ますが、減量の成功までに時間がかかることが多いため、それまでの期間はCPAP、マウスピースなどでの治療を⾏うべきです。減量してもSASが残存する⼈もいますが、その場合、そこからさらにマウスピース、⼿術療法、側臥位睡眠促進枕を組み合わせることによりSASの改善が期待出来ることもあります。
※Pappard PE,et al. JAMA 2000:284:3015-
アルコールとの付き合い方
アルコールは、筋⾁をゆるめる作⽤があるため、気道の閉塞が起こりやすくなります。
寝つきが良くなることもありますが、逆に夜中に⽬が覚めたり、浅い睡眠を増やしてしまう作⽤もありますので、飲酒量は控えめにされることをお勧めします。
Sleep disorder
睡眠障害とは
多忙な現代社会では、睡眠不⾜が⼤きな問題となります。睡眠時間は、⻑くても短くても死亡リスクを高めるといった報告もあります。
睡眠関連疾患国際分類(ICSD-Ⅱ)では、睡眠障害は90種類以上に分類されています。SASだけではなく他にも多くの疾患があり、同じように眠気や多くの⾝体疾患に関連しています。なかなか寝付けない⽅(⼊眠障害)は、精神性の不眠という可能性も考えられますが、間違った睡眠衛⽣が原因となっている場合もあります。
その他にも、脚に不快な感覚が⽣じることで⼊眠障害を起こす“むずむず脚症候群”といった疾患もありますが、こちらは薬による治療によって改善することが出来ます。また、通常の⽣活よりも朝早く⽬が覚める、朝起きることが出来ないといった“リズム障害”もあります。
とりわけSASはあらゆる睡眠障害の中で最も多く⾒られ、睡眠をとっているはずなのに実際には睡眠による休息が得られていないという疾患です。しかし、きちんと検査を受け、正しい治療を⾏っていれば健康な⼈と同じ⽇常⽣活を送ることが可能です。
奏の杜⽿⿐咽喉科 千葉いびき・無呼吸クリニックでは、患者様の病状と⾝体所⾒、治療⽅法のご希望を踏まえ、
日本睡眠学会専門医である院⻑が本邦有数の睡眠呼吸障害専⾨施設での診療経験に基づき、
患者様にとって最良のSASの治療⽅針を決定して参ります。
いびき、無呼吸でお困りの⽅は、是⾮⼀度ご相談下さい。
奏の杜⽿⿐咽喉科 千葉いびき・無呼吸
クリニック予約受付