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CPAPを中止するための減量の目標値

皆さんこんにちは!院長の山本です。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法の一つに減量がありますが、実際どの程度減量がすすめばCPAP療法を中止できるのか、というご質問を患者様より時々頂きます。

 

必要な減量の程度に関して、以下のようなデータがあります。

 

体重が10%減少 → AHIは30%減少

体重が20%減少 → AHIは50%減少

体重が30%減少 → AHIは70%減少

 

このように体重と無呼吸指数(AHI)は強い相関関係にあります。

 

CPAPを使用していても、減量がうまく進めば、AHIが低下し、CPAPを中止できる可能性があります。

 

一方で、元々肥満の程度が軽く、無呼吸指数が高い患者様は、減量してもCPAPの中止は難しくなります。

 

患者様の理想とする体重の目安は、20歳の頃の体重といわれています。その体重が、ひとつ減量目標とすべき体重となります。(20歳時の体重を減量によって下回り、またその体重を維持するのはなかなか難しいといわれています)

 

また肥満指数を表すBMI(Body Mass Index、体格指数、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が21~22であることも、一つの目標体重となります。

 

体重とAHIの相関関係は個人差もありますので、上記の減量の目標値が厳しい様なら、 減量を開始し、体重が落ち止まった時点で一旦簡易モニターにて現状の無呼吸指数を再評価しても良いと思います。

 

ただしその場合、CPAPを連日使用していると、CPAPを中止してすぐの間は気道が広がった状態が続き、無呼吸指数の適正な評価ができませんので、検査前2週間はCPAPを一時中止し、体を自然の状態に戻し、その後に検査を行う必要があります。

 

また頭蓋骨の前後径が短いと、SASにおける気道の最狭窄部である咽頭(のどの奥)の前後径もまた短くなる傾向にあります。

 

日本人の場合、元々頭蓋骨の前後径が短いという人種的な骨格の特徴から、その結果として咽頭の前後径も短くなり、肥満の有病率の割に、 SASの有病率が高いといわれています。

 

一方で白人(ヨーロッパ人)は日本人と比較して前後径の長い頭蓋骨の骨格を持ち、肥満の有病率に対してSASの有病率は低いといわれています。

 

アメリカと日本を比較した場合、アメリカ人は日本人の3倍肥満の人がいますが、SASの有病率はあまり変わりません。

 

よって日本人の場合、肥満がなくても重症SAS患者が多くいるのです。

 

 

 

減量だけでSASの根治が難しい場合でも、減量にマウスピースを併用することでCPAPを中止できるケースもあります。

 

減量するためには、適度な運動と食生活の改善、この2点に尽きます。

 

個人での定期的な運動習慣はなかなか難しいと思いますので、トレーニングジムなどの減量プログラムを利用するのも有効です。

 

肥満はSASの原因だけでなく、生活習慣病(高血圧、高脂血症、脂質異常症)などの様々な 病気の原因になります。

 

減量はSASの軽減と、肥満による合併症の軽減につながり、健康維持にとってとても大切です。

 

CPAPを使用することにより、SASのもたらす合併症を予防することはできますが、肥満は無いに越したことはありません。

 

CPAPを使用し、かつ肥満を認める方に関しては、自分の目標体重を知り、食生活、運動習慣の見直しを行いながら、減量に取り組みましょう。

 

院長 山本 耕司

睡眠学会専門医
耳鼻咽喉科学会専門医