睡眠時無呼吸症候群の手術治療法とは?
こんにちは、スタッフの渡邉です。
春一番が吹き、吹く風も心地よい季節になってきました。皆さまは、いかがお過ごしでしょうか。
今回は睡眠時無呼吸症候群の5つの治療方法の中の1つである手術療法についてお話しさせていただきます。
成人のいびき・無呼吸に対して、手術が奏功するかどうかは、無呼吸の重症度、年齢、体重、鼻腔・咽頭・顔面骨格の形状を診察し、総合的に判断する必要があります。
また、無呼吸の検査結果が、手術効果を予測する大きな判断材料になるため、いずれの手術を行う場合でも、手術前に簡易モニターやPSG検査で無呼吸の重症度の評価を行い、それに応じて手術適応の判断を行うことが必須になります。
無呼吸が中等症以上の場合、そもそも手術効果が期待できない場合が多くあり、また手術による無呼吸悪化などの合併症も考慮する必要があります。
当クリニックにおかかりになる患者様で、手術の適応があると考えられる患者様は全体の10~20%程度になります。
いびき・無呼吸の手術をお考えの方は、まず検査による重症度の評価を正しく行い、あらゆる角度から手術の妥当性を判断することが重要となります。手術の種類は、6種類となります。
【鼻中隔矯正術、下鼻甲介粘膜切除術】
左右の鼻腔を隔てる鼻の中央の仕切りの板を“鼻中隔”と呼び、その板が元々強く曲がっていて、睡眠中の鼻呼吸の妨げになる程の鼻づまりがある場合に、手術によって鼻中隔を矯正して、鼻腔を拡げる手術を鼻中隔矯正術といいます。同時に、下鼻甲介の内側にある骨を取り除いて、鼻腔通気性を改善させる下鼻甲介粘膜切除術を追加する場合もあります。(この2つの手術は基本的に同時におこなわれています)
また、CPAPやマウスピースを行う際も鼻づまりが治療を妨げとなることがありますので、補助治療として手術を行う場合もあります。
【UPPP(Uvulopalatopharyngoplasty、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)】
いびき・無呼吸に対する最も一般的な手術となり、扁桃を切除し、その周囲を縫って、喉を拡げる手術となります。ただし、扁桃肥大がない方の手術効果は乏しく、術前の咽頭形成の評価が重要となります。その他にも、無呼吸低呼吸数値(AHI)、年齢、肥満度、顎下の大きさなどが手術成績に影響します。
【LAUP(ラウプ、Laser-assisted uvulopalatoplasty、レーザー口蓋垂軟口蓋形成術)】
レーザーによって口蓋垂や軟口蓋の一部を切除する手術となります。この手術は現時点では手術効果が明確になっておらず、また手術後の無呼吸悪化の合併症も多く認められることから、欧米の学会では無呼吸の手術として推奨しな、と提言されています。また、中等症以上の無呼吸には奏功しないと考えられるため、術前の無呼吸評価なしでの手術は厳に慎むべきと考えられます。
【MMA(Maxillo-Mandibular Advancement、上下顎前方移動術)】
元々は、歯科で行われている咬みあわせ改善の根本的な手術でしたが、近年、睡眠時無呼吸に対しても効果があることが分かり、無呼吸への手術に応用されるようになりました。奏功すれば手術で無呼吸が改善する可能性がありますが、必ずしもすべての方に効果があるわけではありません。また、術前に歯の矯正治療を1年以上行う必要があり、さらには顔に形が変わる大きな手術となるため、手術適応には十分に判断すつ必要があります。
*MMA手術療法が向いている患者様*
40歳以下、肥満なし、小下顎あり、CPAP、OA(マウスピース)治療の継続が困難
【口蓋扁桃摘出術】
一般的に、小児いびき・無呼吸に対して行われる手術になります。手術には全身麻酔を伴い、1週間ほどの入院が必要となります。医師の判断にで無呼吸が疑われ、扁桃肥大を認める子供に適応となります。親御様から「手術するべきか」というご質問をよく受けますが、無呼吸が中等度以上と考えられる場合は、手術を行うメリットがデメリット(手術や麻酔のリスク)を上回ると考え、手術をお勧めしています。
【アデノイド切除術】
小児の扁桃摘出術とあわせて行う事の多い手術になります。扁桃摘出術の適応となるお子様は、アデノイド肥大を併発していることが多く、手術リスクも扁桃摘出術単独で行う場合と大きく変わらないため、その場合に同時に手術をお勧めしています。
最後になりますが、当クリニックでは手術を実施しておりません。手術適応の場合は、他院への紹介となります。まずは、手術が必要な状況かどうか、他の治療方法の検討も含めて適切な診断を行うためにも、当クリニックで検査を受けていただければと思います。初診の方でも「いびき・無呼吸でお悩みの方」という予約で気軽にお越しいただければと思います。