熱性痙攣と抗ヒスタミン薬について
熱性痙攣とは
生後6か月から5歳くらいまでの子どもの急激な体温の変化に伴って見られる痙攣の一つです。
大部分は単純性熱性痙攣で、痙攣の既往が1.2回であれば経過観察となります。
小児の3-8%に認められる比較的珍しくない神経疾患です。
発症のピークは1歳で、約90%は3才までに発症すると言われています。
しかし痙攣の持続時間が20分を超えたり、24時間以内に発作を繰り返したりする複雑型熱性痙攣もあります。
両親や兄弟に子供の頃同じ熱性痙攣を起こした既往があることが多く、遺伝性のある病気と言われています。
痙攣の予防として発熱初期(37.5-38℃以上)に「ダイアップ(ジアゼパム)」という坐薬が使用されます。
今までに痙攣を2回以上起こした事があるお子様では予防投与が検討されます。
解熱剤で下げた熱が再び急激に上がる時に痙攣を起こす危険性があるため、積極的な解熱剤の使用は勧められておりません。
痙攣が起きたら
・痙攣が始まった時間(発作の長さ)確認
・左右対称であるか
・衣類やおむつをゆるめる
・嘔吐や誤飲を防ぐためやや横向きにする
・身体をゆすらない
・口の中に何か入れたり人工呼吸などをしない
発作が5分以上続く/痙攣を繰り返すことがあれば救急車推奨
★動画があると医療機関受診時医師に伝わりやすいです
抗ヒスタミン薬とは
神経伝達物質ヒスタミンの働きを抑えることでアレルギー反応を抑え蕁麻疹、花粉症、喘息などによる皮膚の腫れや痒み、鼻炎などの症状を改善する薬です。
熱性痙攣に関与してくる薬に抗ヒスタミン薬があります。
脳内ではグルタミン酸等の興奮性神経とGABAやヒスタミンなどの抑制神経によりバランスが保たれています。
抗ヒスタミン薬によってヒスタミンの抑制が取れると興奮性が高くなり、痙攣の閾値が下がり、何らかの刺激によって痙攣発作を誘発しやすくなります。
ある大学病院にて、救急外来を受診した発熱小児のうち、熱性痙攣が認められなかった方の抗ヒスタミン内服率は22.7%、熱性痙攣があった方の内服率は45.5%と約2倍でした。
また、熱性痙攣で運ばれた患者さんを抗ヒスタミン薬服用者と非服用者に分け発熱から痙攣までの時間及び継続持続時間を比較したところ、抗ヒスタミン薬を服用していた患者は服用していない患者に比べて痙攣までの時間は明らかに短く、痙攣持続時間は有意に長いことが知られています。
小児に処方される主な抗ヒスタミン薬の安全性
小児への安全性 製品名
安全⇒ アレグラ、アレジオン、ザイザル
比較的安全⇒ クラリチン、ジルテック、アレロック、タリオン、ゼスラン
熱性痙攣誘発の可能性あり⇒ ザジテン、セルテクト、ポララミン、アレルギン、ペリアクチン、テルギンG etc
これらのことから、熱性痙攣の既往のある小児に対して、鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は痙攣持続時間を長くする可能性があり推奨されません。
発育途中の脳を持つ小児期にヒスタミン薬を長期に使用する場合は、悪影響を及ぼす可能性を危惧して脳内へ移行しにくい安全性の高いヒスタミン薬を選択することが望ましいとされています。