滲出性中耳炎の鼓膜チューブとは?
鼓膜の内側に水が溜まったままと言われたことはありませんか?
鼓膜の内側に水が溜まったままだと耳の発達が遅れてしまうことも…😥
今回は鼓膜の内側に水が溜まる病気、滲出性中耳炎についてお話し致します✨
滲出性中耳炎とは?
鼓膜の奥、中耳と呼ばれるところに液体がたまっている状態です。風邪、副鼻腔炎、急性中
耳炎などの感染後に耳と鼻をつなぐ通路(耳管)が狭くなり滲出液がたまるようになります。
症状は中耳に滲出液がたまるため、耳の閉塞感や聞こえにくさなどが起こります。
検査方法
当院では鼻汁や咳のあるお子様や中耳炎になりやすい年齢のお子様に対し、診察前にティンパノメトリという検査装置で鼓膜に圧力をかけ、鼓膜の動きを見る検査を行います。成人の方に対しては医師の判断で検査をさせていただきます。その後診察で実際に医師が鼓膜を確認します。
治療方法
小児の滲出性中耳炎は、2~3ヶ月以内であれば自然に治る事も期待されますのでその間必要な検査や処置を行います。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などが滲出性中耳炎の原因となることもあるため、それらに対する治療も行います。
2~3ヶ月経っても滲出性中耳炎が自然に治らない場合は、自然治癒する可能性が低いため、手術治療が必要となる事があります。当院では鼓膜にチューブを入れる鼓膜チューブ留置術という手術を行っています。
鼓膜チューブとは
シリコン製やテフロン製の小さな中空のチューブで、鼓膜を小さく切開しそこに留置します。チューブによって圧力が中耳と外界で等しく保たれます。中耳内が陰圧でなくなることにより、中耳の粘膜から浸出液が出なくなり、中耳内に浸出液が溜まらなくなります。
鼓膜チューブによる治療
鼓膜にチューブを挿入することで、働きの悪い耳管の代わりに、中耳内と外気の換気が行えるようになります。チューブが挿入されている間は、中耳内に陰圧がかからなくなるため、中耳に滲出液が溜まりません。
中耳換気チューブを入れて聴力検査を行うと、低い音が少し聞こえにくくなることがたまにありますが、日常生活に支障はありません。
チューブ治療を受けた方のよくある質問
患者様より「お風呂やプールにいれても大丈夫でしょうか?」と心配の声をお伺いすることがありますが、外耳道に水ができるかぎり入らないよう注意すれば入浴は普通に行ってかまいません。また、外耳道に少し水が入っただけでチューブの穴から中耳内に水が入り感染を起こすとはほとんどありません。しかし、入浴時に潜ったり、シャワーのお湯が大量に耳に入ってしまうなど、外耳道にたくさん水が入ってしまう心配がある場合は耳栓を使用した方がよいです。
水泳時は適切な耳栓を使用することをお勧めします。また、耳栓が外れないように水泳帽などで耳を覆うのがよいでしょう。また、水泳を行っていて耳漏が出てしまった場合は症状が落ち着くまで水泳はやめましょう。あまりに耳漏を繰り返す場合は水泳は行わない方が良いでしょう。
上記の点を注意すれば水泳は十分可能ですのでご安心いただければと思います
チューブ抜去について
チューブはだいたい1年から2年ほどで抜きますが、途中で自然に抜けることもあります。チューブ周辺で頻繁に感染を起こす等、不具合があった場合はその時点でチューブを外す事もあります。その都度治療することで耳垂れや出血を防ぐことができることもあるため、チューブを留置している間は定期的な受診が必要になります。安定していれば、2カ月に一度の通院で大丈夫です。
チューブを摘出する場合は鼓膜に麻酔液を染みこませた綿を鼓膜に置いて、麻酔を行ってからチューブの抜去を行います。普通は数週間以内に穴は自然に閉鎖します。チューブを入れた方の1~10%で鼓膜に穴が残ってしまう場合があります(チューブを留置した期間により異なります。)チューブを抜いて1年以上鼓膜が閉じない場合は将来穴を閉じるための手術を勧める場合があります。
まとめ🐇
滲出性中耳炎になったらすぐにチューブを入れる訳ではありません。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎等を併発している場合はそれらの治療を行うことで、結果として滲出性中耳炎が改善することが多くあります。アレルギーがダニやスギの場合は、舌下免疫療法といってアレルギー性鼻炎を根本的に治す治療もあります。
中耳換気チューブを入れる目的は聞こえをよくすることと、慢性中耳炎という、将来治療しにくい中耳炎に進行することを予防することです。チューブを入れることで、鼓膜に穴が残る(鼓膜穿孔) リスクは考えられますが、チューブを留置することのメリットがデメリットを上回ると考えられる場合にチューブの留置をおすすめしています。
将来の中耳炎を予防し、お子様の耳の自然な発達を促していくことが、お子様の健やかな成長につながります。