「アレルギー性鼻炎の治療戦略」②抗原回避
「アレルギー性鼻炎の治療戦略」というタイトルでZoom講演をさせて頂きました。
その内容を5回に渡りご説明させて頂きます。
今回は3回目の
②抗原回避について
です。
アレルギー性鼻炎の治療の第一歩は、
「原因の確認」と「抗原(原因物質)の回避」
です。
原因物質の確認は、アレルギー採血を行うことで確認が可能です。
当院では採血検査は随時実施可能です。
(採血検査はView39といって、メジャーな原因物質39種類をセットで調べる検査を多く行っています。3割負担の方で約5000円となります。(受給券内で施行可能な保険診療です。))
View39はコチラ↓
また小さなお子様で、採血検査が難しい方には、「イミュノキャップラピッド」という簡易検査も実施可能です。(こちらも受給券内で施行可能な保険診療です。)。
イミュノキャップラピッドはコチラ↓
表にある通り、検査の陽性率は年齢が上がるにつれて上昇していきます。
あまりに低年齢で実施しても、結果が得られにくいというデメリットはありますが、陽性の結果が得られれば、抗原回避に取り組む大きな理由となり、またそのモチベーションにもなります。
また後に説明する舌下免疫療法は5才より実施可能ですが、治療を開始する要件として、
検査でダニまたはスギが陽性
であることが必要になります。
ですので5歳を過ぎてダニアレルギーやスギ花粉症が疑われる場合は積極的に検査を行い、治療適応があることの判断を行うことをお勧めしています。
またアレルギー性鼻炎を発症しやすいかどうかは、アレルギー体質の有無、血縁者のアレルギー症状などからある程度の予測が可能です。
アレルギー性鼻炎を発症しやすい諸条件は、
- 喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、すでに他のアレルギー疾患を指摘されている
- 親族(両親、兄弟)にアレルギー性鼻炎の患者がいる
などです。
例えば両親か兄弟のうちの1人がアレルギー性鼻炎がある場合、本人がアレルギー性鼻炎を発症する確率は30%、2人いる場合40%、3人いる場合45%程の発症率となります。
アレルギー性鼻炎の患者さんが年々増加していることを考慮すると、このパーセントはもっと高くなっていくことが予想されます。
また何らかのアレルギー性鼻炎の原因物質(抗原)に反応(感作)している場合、そうでない方と比較して新しい原因物質に感作しやすくなります。
以上の事より、現在アレルギー性鼻炎でなくても、アレルギー性鼻炎を発症しやすい諸条件がある方は、しっかりと発症の予防をしていくことが大切です。
以下に、代表的なアレルギー性鼻炎の原因となるダニ、スギの抗原回避方法を示します。
ダニ抗原の回避方法
スギ抗原の回避方法
アレルギー性鼻炎の疫学データについて
アレルギー性鼻炎の患者さんは年々増加傾向にあります。
その理由は、アレルギーの世界では「衛星仮説」という言葉で説明がされています。
要は昔と比較し、社会が人間にとって清潔な環境になり過ぎてしまい、それがアレルギーを司る人間の免疫系に異常を起こしているというものです。
昔は生活環境の中で、今以上に様々なアレルギー物質(抗原)に触れる機会があり、人体がそれらを人間にとって有害なもの、無害なものを区別する機会がたくさんありました。
現在、社会環境が清潔になり過ぎたことにより、アレルギー物質に触れる機会そのものが減り、免疫系を正しく使う機会が減ってしまいました。
その結果、学習の機会が減った人体が、稀に入ってくるアレルギー物質をすべて有害なものとして対処してしまうようになったというものです。
通年性アレルギー性鼻炎≒ダニアレルギー
上の表にもある通り、ダニ抗原、スギ花粉をはじめとするアレルギー性鼻炎の患者さんはここ20年で爆発的に増加しており、現在では成人において半数以上の人が何らかのアレルギー物質に反応しているアレルギー性鼻炎である、と言われています。
上の表は、年齢層別のアレルギー性鼻炎の有病率です。
アレルギー性鼻炎が一度発症すると、60~70歳くらいまで継続してしまうことを表しています。
アレルギー性鼻炎の患者さんが増加傾向であることを考えると、アレルギー発症が今後より低年齢化、持続化していくことも考えられます。
全ての人にアレルギー性鼻炎が発症する可能性があるといっても過言ではありません。
アレルギー性鼻炎の症状がまだ出ていない人でも、症状が出る前からあらかじめアレルギー対策を行っておくことが必要と言えます。
さて、次回は、
③舌下免疫療法
についてご説明したいと思います。
乞うご期待ください!!
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