「アレルギー性鼻炎の治療戦略」③舌下免疫療法
「アレルギー性鼻炎の治療戦略」というタイトルでZoom講演をさせて頂きました。
その内容を5回に渡りご説明させて頂きます。
③舌下免疫療法について
現在あるアレルギー性鼻炎の治療法のなかで、ダニアレルギーとスギ花粉症を根本的に治療できる可能性のある方法はこの舌下免疫療法のみになります。
舌下免疫療法 鳥居薬品「シダキュア」「ミティキュア」
舌下免疫療法の治療の基本は、
「早いうち、軽いうち、小さなうち」です!
早いうち:
アレルギー検査の数値が少なくても、少しでもアレルギー性鼻炎の症状があれば、治療を開始した方が根治する可能性が上がり、また早期に治療効果が得られやすくなります。
軽いうち:
軽症なうちに治療した方が根治までの時間が短くなります。
小さなうち:
上記の理由以外に、ダニ舌下免疫療法の副効用として、まだ発症していないアレルギー物質の発症を予防する働き(新規感作抑制効果)があります。
小児の患者様でアレルギー性鼻炎があるお子様は、最初はダニ、スギアレルギーで発症するケースが多いですが、アレルギー性鼻炎が進行するとそれらのアレルギーに留まらず、雑草花粉(ハルガヤ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなど)や樹木花粉(ハンノキ、シラカンバなど)に次々と反応(感作)していきます。
スギ以外のこれらの花粉症が一度発症してしまうと、それらを根本治療する方法は何もありません。
そして多くの方はその症状が60~70歳頃まで継続します。
(ただしヒノキ花粉だけは、スギ舌下免疫療法を行うことで、約50%の方で改善効果が認められます。)
またシラカバ科花粉(シラカンバ、ハンノキ)には、花粉-食物アレルギー症候群といって、花粉と似たタンパク質構造を持つ果物が食べられなくなるという厄介な症状を引き起こす場合もあります。
(シラカバ科以外の花粉でも認めることがあります。)
花粉-食物アレルギー症候群(PFS)の一例
このように花粉症には様々な問題がありますが、
ダニ舌下免疫療法を施行すると、まだ反応(感作)していないこれらのアレルギー物質の新規発症を予防する効果があります。
これこそが小さなお子様のうちにダニ舌下免疫療法を開始して頂きたい最大の理由になります。
小さな頃から舌下免疫療法を開始するのに躊躇される理由の多くは副作用の心配にあると思います。
当院では通常の舌下免疫療法の投与方法とは違い、副作用の出現に配慮した「吐き出し法」と、当院院長が独自に開発した「短時間法」という方法を採用しております。
この方法を開始したことにより、副作用の問題でダニ舌下免疫療法を途中で中止してしまう患者様がとても少なくなったように感じています。
またこの方法により、治療開始初期に起こりやすい、副作用による諸症状をかなり予防できていると思います。
現在当院では、ダニ舌下免疫療法症例約600例、スギが500例ほどの患者様がいらっしゃいますが(2021年4月現在)、「吐き出し法」、「短時間法」を採用してからは、アナフィラキシーショックをはじめ、強い副作用症状は発生していません。
(ダニ舌下免疫療法による、口腔内のかゆみなど、軽度の副作用は3割ほど出ますが、それにより中止に至るケースはほぼありません。)
ちなみに現在(2021年3月)、当クリニックの鳥居薬品スギ・ダニ舌下免疫療法処方件数は、
ダニ舌下免疫療法 全国1位
スギ舌下免疫療法 全国8位
総計第1位
となっております。
処方件数の多さは、当院での導入方法による副作用に起因する脱落率の低さが大きく影響していると考えております。
舌下免疫療法は他の医療機関では毎月の受診が必要になる医院が多いですが、当院では治療が安定すれば、2か月に1回の通院で治療可能(ほとんどの方が通院開始2か月で2か月おきの受診に切り替わります)です。
舌下免疫の治療法導入でお悩みの方は、ご相談だけでも大丈夫ですので、是非当院にお掛かり下さい。
次回は最終回、④アレルギー性鼻炎の手術療法
にお伝えしたいと思います。
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